九州佐賀の有明海。苛酷な自然と日々闘う海苔漁師一筋に生きてきた男が、ある日、フランツ・リストの名曲「ラ・カンパネラ」を聴いて感動、そして決意する。「この曲を弾きたい!」プロのピアニストも怯むほどの難曲「ラ・カンパネラ」を弾くなど、絶対無理と、妻や息子の猛反対を押しきり、音楽とは全く無縁だった 52才の男の本気の挑戦が始まる。モデルである徳永義昭氏は、楽譜も読めない状態から、「ラ・カンパネラ」を自分も弾いてみたいという一心で、猛練習を重ねる。仕事とピアノの両立は困難を極めるが、いつかフジコ・ヘミングさん本人に聴いてもらいたい、新たな挑戦に年齢は関係ない、夢は追いかければ必ず叶うという信念で、2013年、ついに憧れのフジコ・ヘミングさん本人の前で「ラ・カンパネラ」を演奏。マスコミにも度々取り上げられ、全国的に知れ渡るようになる。
 『さよなら、クロ』『野球部員、演劇の舞台に立つ!』など多数の映画を製作してきた鈴木一美が、この実話に共感し、地元、佐賀の全面的な協力のもとに、初監督作品として映画化。現地では海苔師の皆さんの技術指導、監修のもとに撮影。炊き出し部隊による食事の支援や、エキストラの動員を実施、支援する会のメンバーが中核となり、よりリアルなロケーションが可能になった。 『硫黄島からの手紙』『汚れた心』など海外での話題作に出演し、『愛と誠』『BRAVEHEART海猿』『超高速!参勤交代』などでも知られる伊原剛志が主演決定後1日6時間ピアノを猛特訓し、ついに「ラ・カンパネラ」を演奏できるまでになった。難しい船上での海苔漁の仕事もこなし、佐賀弁もマスター、役者魂を見せる。加えて、南果歩、緒形敦、不破万作、大空眞弓など実力派演技陣が結集し、“誰もが元気になり、明日への希望を抱くことができる”名作が生まれた。
 海苔漁師になって三十有余年、繁忙期が明けた途端に、気が抜けたように、パチンコ通いに明け暮れていた徳田時生は、ある日、自宅で自棄酒を飲んで寝ていた時に、つけっぱなしのテレビから流れてきた情熱的なピアノの音色に、かつてない衝撃を受ける。
 「オイも、この曲を弾いてみたか!」。曲目は、フランツ・リストの名曲「ラ・カンパネラ」。それまでの人生で、音楽には全く無縁。楽譜も読めず、「ド」の位置にすら戸惑う。妻や息子からは「弾けるわけがない」と猛反対され、仕事仲間からも馬鹿にされながら、時生は楽譜を購入し、1日4時間、長い時には8時間、ピアノに向かい、練習を重ねるー。